会議が近づくたびに50~100ページの資料がメールで届いた。こども家庭庁の政策を話し合う会議のメンバーになった20代の委員は、毎回入念に読み込んでから臨んだ。

 中央省庁の会議では、委員に前もって資料を送ることが多い。限られた時間のなかで充実した議論を行うためだ。

 この委員は、ある資料の記述が気になった。「ここなんですが、支援の対象を広げないと漏れる子どもが出てしまいます。それでは根本的な支援にならないと思いました」。会議の場でそう発言すると、実際に制度の支援対象が広がった。

 委員の影響力の大きさを実感すると同時に、「自分の発言が誰かの人生を左右するかも知れない」という重圧、「自分が、子どもや若者の声を代表していいのか」という葛藤も生じたという。

「大多数の『聞かれない声』がある」

 同庁の会議に参加した別の20代委員は「若い世代の意見も採り入れようとしてくれるのは良い流れだと思う」とした上で「バージョンアップも必要」と考える。

 自分たちのように政府の会議の委員になる子どもや若者はごくわずか。「大多数の『聞かれない声』がある。より多くの子ども・若者が意見を伝えやすい場を用意することも、行政は考えてほしい」。大人が大半を占める会議とは別に、子ども・若者主体の会議を設置すれば、発言しやすくなるのではと考えている。

 いま、政策形成過程で若い世代の意見を採り入れる動きが国や自治体で拡大している。2023年4月、こども家庭庁の創設と同時に「こども基本法」がスタートして、国や自治体は子どもにかかわる政策を進める際、その影響を受ける当事者である子どもや若者の意見を聞くことが義務づけられた。全ての意見を採り入れる必要はないが、少なくとも「耳を傾ける」ことが、政策づくりのプロセスで必須になった。

子どもたちの意見を踏まえることが「こども基本法」で義務化されてから1年余。国や自治体の取り組みの現状と課題を探りました。

「子どもの声、反映させる必要あるの?」 霞が関はどう変わった

 同庁のある幹部は「正直、最…

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