外交とは何か。広辞苑には「国際間の事柄を交渉で処理すること」とある。国と国の関係で行われるのが基本だが、政府間の対話チャンネルが常に正常とは限らない。そんな時、補完的役割を果たすのが「議員外交」だ。政治家のパイプがもたらす効果とリスクを、いくつかの事例から考えたい。(松山紫乃)

ニューヨークのトランプタワーで自民党の麻生太郎副総裁(右)を出迎えるトランプ前米大統領=2024年4月23日午後、ニューヨーク、小手川太朗撮影

 5月29日、東京都内のホテル。自民党の茂木敏充幹事長が待機する部屋に、中国共産党の劉建超・中央対外連絡部長が姿を見せた。笑顔で握手を交わした劉氏は、「これからも関係を増進させたい」と語りかけた。両氏は、2018年を最後に開かれなかった日中与党交流協議会の再開で合意した。

 現在の日中関係は、必ずしも良好とは言えない状況が続く。昨年8月、東京電力福島第一原発の処理水放出が始まると、中国は日本産水産物の全面禁輸に出た。日本も昨年、半導体製造装置など23品目の輸出規制を強化。供給網から中国を切り離す米国と足並みをそろえる。

 首脳間の対話は徐々に再開している。昨年11月に岸田文雄首相と習近平(シーチンピン)国家主席が、今年5月には岸田首相と李強(リーチアン)首相が会談した。歩み寄りこそあるが、根本にある「とげ」は抜けていない。

「もしもの備えに」中国の狙い

 そのタイミングで訪日した劉…

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