Smiley face
論文の先駆けとなったリポート。図書館振興財団が主催するコンクールで文部科学大臣賞を受賞した(同財団の許可を得て撮影)

 世界に5体しかないとされていた絶滅動物ニホンオオカミの剝製(はくせい)が新たに見つかった。発見されたのは多くの研究者が行き交う博物館の中。記録では「廃棄」とされていたはずの剝製の謎を、見学に訪れた小学生が解き明かした。

 東京都の中学2年生の小森日菜子さん(13)は、2020年11月、小学4年生のときに、茨城県つくば市にある国立科学博物館(科博)の収蔵庫を見学できるイベントに参加した。

 普段は公開されていない収蔵庫。中に入るのは初めてだった。フロアには、自分の身長をはるかに超える大きな動物の剝製がズラリ。天井まで届く棚にも、小型動物の剝製や骨格標本などが並んでいた。

 「もう十分満足だなぁ」。そんなことを思いながら、次のフロアに移動しようとしたときだった。

 棚の一番下にひっそりと置かれていた一つの剝製が目に留まった。

 「あれ、これって」

 小森さんの頭に反射的に浮かんだ。

 「もしかしてニホンオオカミ?」

 ニホンオオカミは、北半球に広く生息するハイイロオオカミの日本固有の亜種で、本州や九州、四国の山地にいたとされる。明治末期の1905年に奈良県東吉野村で捕獲された1頭を最後に記録は途絶え、その後まもなく絶滅したとされる。

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 研究員にたずねてみたが、施設に500万点近くも収蔵する標本のうちの一つで、哺乳類の担当でもなかったため、その場で明確な回答は得られなかった。

 小森さんは動物が好きで、3歳ごろから動物の図鑑や動画をたくさん見てきた。中でも特に心を引かれていたのが絶滅動物だった。「まだ解明されていない未知の動物がいたり、不思議な姿がかわいい」と言う。

 目の前に現れたその剝製は首が短くて、前脚が短い。おまけにしっぽはふさふさだ。何度も見てきたニホンオオカミの姿にとても似ていた。

博物館にメールしてみた

 「私の中のレーダーがピピッと、これはニホンオオカミ、これはニホンオオカミと言っていました」(小森さん)

 ただ、ニホンオオカミの剝製は世界で5体しかないとされ、国内にあるのは3体。そのうちの1体は確かに科博が所蔵するが、それは東京の上野本館で展示しているものだ。

 どういうことだろう。見間違いだったのかな。外国産のイヌ科の動物だったのかな。

 「何の動物か知りたい剝製があります」。どうしても気になって見学の翌日、科博にメールで問い合わせた。

 返事が来たのは約3カ月後だった。

 返事にはこう書いてあった…

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