それぞれの最終楽章 最愛の妻の死(6)
漫画原作者 城アラキさん
今日はちょっとお腹(なか)が痛いです。(中略)自分でもいろいろ試しながら痛み止めを使ってます。(中略)主人はすぐに痛み止めをもっと使えるというけど(中略)少し我慢しておさまる痛みは薬は使わないようにしています。でもそれで大丈夫です。
以上は2010年3月29日、浜松市の実家で療養する淳子さんが訪問看護師に訴えた内容だ。これが記されたカルテの「家族情報」欄には、「夫の予期悲嘆が強く、今後、状況が変化していくとともに夫の精神的サポートも重要な課題」などとある。
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当時の僕は表情は硬く、口数も少なかった。死が迫っているのに世間話をしていく看護師も、当たり障りのない笑顔で応じる淳子さんも、それぞれの役割を演じているとしか思えない。そんな「噓(うそ)の平穏」を横で見ているのが苦しくなっていた
淳子さんは20代のころ、僕…