絹谷幸二さん=2021年10月23日

 壁画のアフレスコ技法を採り入れた鮮烈な色彩の絵画で知られ、先月1日に82歳で死去した洋画家・絹谷幸二さん。ともに独立美術協会の重鎮として洋画界を率いてきた奥谷博さん(91)が、思い出を語った。

 6月に電話で話したのが最後になりました。絹谷さん、ご活躍だねって僕が言ったら「もうご活躍はいいですよ」と。本人は何かを感じていたのでしょうか。

 出会いは、僕が東京芸大にいた頃。壁画の島村三七雄先生が、絹谷さんの実家である奈良の料亭にお世話になっていたそうで、まだ中学生か高校生の絹谷さんを連れてきてくれたんです。この人は絵がすごく好きで、県展にも入選してるんだよ、奥谷くん頼むよ、と言ってね。

 多感な時代に格式高い料亭のご子息として生活する中で、絹谷さんは夜と昼の違いを感じていたんじゃないでしょうか。彼の後期の作品には、生と死、聖と俗といった、反対のことが描かれていた。「光の部分と影の部分を表現しないといけない」と、いつかちらっと話していました。

 絹谷さんの目が開いたのは…

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