自動車保険業界の悪しき慣行(下)
損保各社は2026年まで、3年連続で自動車保険を値上げする。コロナ禍後の交通量の増加や修理費の高騰が理由だとする。ただ値上げの前に、見直すべきことはないか。自動車保険が抱える課題を3回にわたって検証する。
海に面した首都圏の都市に7階建ての堅牢なビルが立つ。1階のショールームには大手自動車メーカーのハイブリッド車が展示されていた。
このメーカーのディーラー(正規代理店)の自社ビルだ。6階に東京海上日動火災保険、5階に損害保険ジャパン、あいおいニッセイ同和損保と、ライバル損保が同居していた。
このビルから4キロほど行くと、同じ自動車メーカーの別のディーラーが所有する本社ビルがあり、ここには三井住友海上とあいおいの自動車営業部などが入っていた。
自動車ディーラーとはどんな存在なのか。大手損保の幹部は自虐的に話す。「『超』がつくお得意さま。いかにすり寄るかで各社がしのぎを削っている」
自動車保険は、損保の売り上げの半分を占める収益の柱だ。各社とも火災保険などの赤字を、自動車保険が埋める構図が続いてきた。稼ぎ頭の保険契約を大量にもたらす存在がディーラーだ。
このため、損保各社はディーラーの求めに応じ、イベントの駐車場係などに社員を駆り出したり、売れ残った車両を購入したりする。いわゆる「本業支援」の名目で支えてきた。
夏になると、朝4時から森へ…
「いま振り返ってもばかばかしい」。ディーラー向けの営業経験がある大手損保の中堅社員の男性は、こう振り返った。
東海地方で7~8店舗を任さ…