福井市で1986年に女子中学生を殺害したとして、殺人罪で服役した前川彰司さん(60)を無罪とした名古屋高裁金沢支部のやり直し裁判(再審)の判決をめぐり、1日、上訴権の放棄を発表した名古屋高検。再審判決で「失望を禁じ得ない」と批判された検察側の対応について、浜克彦次席検事は会見で「裁判所の指摘を重く受け止めており、検察としても真摯(しんし)に反省し、教訓とすべきだと考えている」と述べた。一方、前川さんへの謝罪については「現時点では考えていない」とした。
浜次席は会見の冒頭、「上級庁とも協議の上、検討した結果、憲法違反や判例違反といった上告理由は見当たらなかった」として、上告断念に至った理由を明らかにし、無罪の確定を「厳粛に受け止めている」とした。
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再審判決は、捜査機関が誘導などを行い、関係者の一人のうその供述に沿って他の関係者の供述が形成された疑いを指摘していた。この点について、浜次席は「証拠の信用性の評価に関する指摘を重く受け止める」と述べた。
また判決は、関係者が言う「血のついた前川さんを見た日」の根拠となったテレビ番組の放映日が1週間ずれていたことが判明したと指摘し、検察官が一審段階で認識しながら公判を続けたことを厳しく非難。「不利益な事実を隠そうとする不公正な意図があったといわれても仕方がない」と評価していた。この点も、浜次席は「当時の検察官の対応は不公正なものと評価されたのも当然」「そういう風に判断されるのもやむを得ないだろう」などと述べた。
ただ、なぜそうしたことが起…