NHK・Eテレの幼児番組「おかあさんといっしょ」(毎週月~土曜、朝7時45分)が今月、放送開始65年を迎えた。子どもたちだけでなく、子育てに悩む親たちにとっても伴走者であり続けている。
番組は1959年10月5日、NHK総合テレビで開始。当初は週1回の放送だった。翌年から月~土曜の午前10時台の帯番組となり、3兄弟の子ブタの人形劇で、声優に黒柳徹子さんや大山のぶ代さんを起用した「ブーフーウー」(60~67年)が人気を呼ぶ。
66年に別番組「うたのえほん」と統合し、人形劇、歌、体操という現在と同様の3本柱がそろった。
番組開始当時の対象年齢は4~5歳。70年代になると幼稚園に通う子どもが増え、家にいないという事態になった。
そこで家にいるさらに年齢の低い2歳児に見てもらえるように、69年に始まった米国の教育番組「セサミストリート」にならい、79年に「2歳児テレビ番組研究会」を発達心理学などの専門家とつくった。
研究の結果、幼児が集中して番組を見ていられるのは2分半程度だとわかり、複数のコーナーに分ける「セグメント形式」を導入。歌や体操、人形劇などを代わる代わる放送し、幼児が安心できるよう順番を固定するスタイルを確立した。
幼児番組に携わって30年以上のNHKエデュケーショナルの古屋光昭プロデューサー(58)は番組の65年を振り返り、「ずっと『おかあさんといっしょ』という番組ですが、人間の細胞が生まれ変わるかのように、数年経ったら別物になっているような変わり方をしている」と表現する。
例えば、体操の出演者はかつて「お兄さん」だけだったが、81年から身体表現を担当する「お姉さん」(初代・馮(ひょう)智英さん)を起用し、2019年からは「体操のお姉さん」(初代・秋元杏月さん)との2人態勢となった。人形劇のキャラクターでは現在の「ファンターネ!」(22年~)で性別のないキャラクター「やころ」が登場。「当初から多様性を大事にしてきた。その延長線上にある」と語る。
古屋さんは、この10年余りの変化として、社会的な役割を意識するようになった、という。
きっかけは11年の東日本大震災だった。
「それまでは、現実世界とは…