それぞれの最終楽章 看護部長ががんに(6)
米文学研究者 佐野潤一郎さん
コロナ禍が世界を覆った2020年春に卵巣がんを告知された妻の敬子は、治療しながら看護の仕事を両立させました。翌21年2月に私にも膀胱(ぼうこう)がんが見つかって、夫婦で「がんサバイバー」に。そんな中で敬子の病状は確実に進み、23年11月から「在宅緩和ケア」へと移行しました。
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自宅マンションは慣れ親しんだ間取りに気に入ってそろえた家具が置かれ、窓の向こうに明石の海が広がっています。敬子は誰にも気兼ねせず笑ったり泣いたりしながら、長年の闘病生活で疲れ切った体と心を癒やしていました。
訪問診療には優しく頼もしい医師や明るく気遣いにたけた看護師、知識豊富な薬剤師などがやってきました。理学療法士のリハビリや栄養士による食事指導、さらにケアマネジャーが旅先へ持っていける酸素機器を準備してくれるなど、大勢の専門職たちに生活全般を支えられました。
しかし1カ月後、敬子は自ら…