池袋演芸場の河村謙支配人がその電話を受けたのは、昨年末だったと記憶している。
「一カ月連続の独演会を同じようにやりたいんです。お借りすることはできますか」。声の主は蝶花楼桃花だ。そのときはネタ下ろしが多い、という程度だと受け止めていた。
桃花が「毎日ネタおろしをする」と意識したのは、今年4月に演芸場で会見を開いたときだ。率直に思った。「ホントに大丈夫か?」
池袋演芸場では、定席の夜の部が午後8時半に終わる。午後9時の「桃花三十一夜」開演までに楽屋は慌ただしく入れ替わる。従業員を休ませるため、河村は自身の休み以外は桃花の独演会に来て、終演後の戸締まりなどをしている。
昨年は浅草演芸ホールで、女性のみの出演者で寄席興行をする「桃組」を企画し、主任を務めた。様々な企画を繰り出す桃花は「プロデュース力が強い」と河村は認める。目立つ活動がやっかみを生む業界、どんな批判が飛んでくるかわからない。今回の独演会では「何か言われても気にしないでね」と声をかけ、見守っている。
「桃花三十一夜」21日の1席目は、三遊亭円朝作の怪談をにおわせておきながら、三遊亭白鳥の新作「メルヘンもう半分」。本編だけで30分はかかる、今回のネタおろしで最長の噺(はなし)をかけた。
「一番長い、厄介なネタをや…