閑静な住宅街の一角にある2階建てのアパート。日が差し込む1Kの部屋にベッドやテレビが置かれ、キッチンには調理器具が並ぶ。
横浜市にある「わたしのお家(うち)」は、住む場所がなく、困難を抱えている18~59歳の女性のためのアパート型の自立支援施設。神奈川県の独自事業で、今年1月にオープンした。利用する人は約半年間、ここで暮らしながら、スタッフや相談支援員と立てた計画に沿って新しい生活に向けて準備をする。家賃の負担はなく、県内全域から受け入れる。
20代の女性は、開設された次の日に、かばん一つでここに来た。
それまでは、家族と距離を置くため、シェルターにいた。外出ができないため仕事を休まなくてはならず、収入がなくなった。他の利用者との会話に制約があり、食事や入浴などの時間が決められている生活にもなじめなかった。そんなとき、女性相談支援センターの相談支援員から「お家」の存在を聞いた。
一人暮らしは初めてだが、これまでも家のことは自分でやってきた。現在は週6日出勤し、買い物や料理など家事はすべて自分でやる。ふとしたとき、すぐ相談や雑談ができるスタッフの存在に助けられている。「日常のささいなこと、生活への不安。1階の事務所に行けば、なんでも相談できる」
休日は、自転車を借りてサイクリングをする。1人での遠出が不安なときはスタッフが一緒に来てくれる。春には、他の入居者とイチゴ狩りに行った。
先を考えると「お金のこと、仕事、全部が不安」。でも、望んでいた「自分自身で選択できる自由」を感じながら自立に向けて準備している。「ひとりで暮らしていける自信は少しずつついてきました」
従来型の女性自立支援施設は、携帯電話の持ち込みや外出に制限がある。DVや虐待などから逃れてきた女性が加害者に居場所を特定されないようにするためだが、仕事や学業を続けるのが難しくなるため、利用をためらう人もいる。
スマホ、ネット、通勤通学もOK
「お家」での生活は、普段の…