再会した「きょうだい」ふすま絵の説明をする山下善也さん。左が宮越家の「春景花鳥図」、右が大英博物館の「秋冬花鳥図」の高精細複製品=2025年5月20日午後2時17分、中泊町、帆江勇撮影

 23日から春の一般公開が行われる中泊町の宮越家離れ「詩夢庵」で20日、内覧会が開かれた。桃山時代末期から江戸時代初期にかけての狩野派のふすま絵がある部屋には、特別展示として対をなす大英博物館所蔵のふすま絵の高精細複製品が並べられた。そろった傑作が本来の姿を取り戻したかのようで、華やかさを増した。複製品とはいえ、150年の時を経て再会した「きょうだい」が見学者を待つ。

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 宮越家のふすま絵「春景花鳥図」は、詩夢庵で最も格式が高い、15畳の「奥の間」西側にある。18日に奈良県桜井市の談山神社から運ばれてきた大英博物館の「秋冬花鳥図」の複製品のうち、「冬」の一枚が部屋の南側に直角に据えられた。冬から春への連続性がうかがえる。残る3枚は、部屋の北側に並んだ。見学者は、ふすま絵に囲まれるようになる。宮越家の当主寛さん(66)は「秋冬の方が重厚感があるかな」と言いながら「きょうだい」の再会を感慨深げに見つめた。

 二つのふすま絵は、もともと談山神社(旧多武峰妙楽寺)が所有していたが、明治の廃仏毀釈(きしゃく)のあおりを受けて、1870年ごろばらばらになった。キヤノンとNPO法人の京都文化協会は、日本古来の文化財を支援するため、「綴(つづり)プロジェクト」に共同で取り組んでいる。キヤノンの高精細カメラとデジタル技術で、大英博物館所蔵の「秋冬花鳥図」の複製品を制作し、2018年、談山神社に奉納した。

 「春景花鳥図」は、宮越家の9代当主正治さんが1922年、東京美術倶楽部のオークションで落札した。昨年9月に山下善也・元京都国立博物館主任研究員が、「宮越家のふすま絵と大英博物館のものは対をなす」と発表。直後に京都文化協会側から、山下さんに「二つを並べてみてはどうか」との提案があり、山下さんが宮越家や町博物館などと相談して、今回の特別展示が実現した。特別展示の監修も担った山下さんは「400年前の絵がこんなにきれいに残っているのを体感してほしい」と話している。「秋冬花鳥図」の複製品は、9月からの秋の一般公開まで宮越家に留まる。

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