山形でサクランボや洋ナシの栽培が始まって今年で150年になる。幾多の困難を超え、「くだもの王国」を築いた。
山形県内でサクランボ栽培が始まったのは、明治改元から7年後の1875年。明治政府が前年、米国から持ち帰った西洋果実の苗を全国に送った。山形にはサクランボや洋ナシ、ブドウ、リンゴなど10種の苗が送られ、当時の県庁敷地内に植えられた。翌76年、県は北海道から取り寄せた苗木300本を試植し、本格的な栽培が始まった。
気象・地理的条件の良さから、内陸部を中心に栽培が広がり、明治後期にはすでに産地の地位を確立。戦時中は豆や芋の畑に切り替えられ、戦後も石油ショックの影響による価格暴落、米国産の輸入自由化などの危機があったが、乗り越えた。
2023年の収穫量の全国順位はサクランボと洋ナシが1位、スイカが3位、ブドウ、リンゴ、モモ、メロン、スモモが4位だった。サクランボの収穫量はおおむね年1万~1万5千トンで推移し、24年産の収穫量は山形が全国の75%を占めた。
近年は気象の変化が大きく、凍霜害や高温障害への対策が課題となっている。生産者の高齢化や後継者不足も進む。08年に最大の3180ヘクタールに上った栽培面積は、24年は2800ヘクタールに。10年に1万戸を超えていた生産者数は、20年には7千戸にまで減ってしまった。
県は「やまがたフルーツ150周年」の事業に約1億円を投じて県内外で記念イベントや販売促進フェアを開き、PRに力を入れている。
品種いろいろ
「ナポレオン」は明治期に米国から導入された。酸味が強いが肉厚で、主に缶詰に加工された。
その子どもが「佐藤錦」。佐藤栄助氏が甘みの強い品種とナポレオンを交配させ、1912年に育成を始めた。やわらかい果皮と濃厚な甘みが特徴で、全栽培品種の約7割を占める「サクランボの王様」だ。
その子どもの「紅秀峰(べにしゅうほう)」は91年に品種登録された。晩生品種で、甘さに加えかための食感で日持ちがよい。
さらに、その子どもの「やまがた紅王(べにおう)」は2023年に本格デビューした品種。大玉で糖度も20度以上と甘く、次期主力品種として期待されている。
「誰より甘い実を」
山形県内でサクランボ栽培が最も盛んなのが東根市だ。奥羽山脈のふもとに広がる扇状地に、果樹園が続く。その一つ、岡崎広良さん(51)の畑では、緑色にふくらんだ実が鈴なりになっている。すでに赤みを帯びた実もある。
今月24日。草いきれの中…