社員たちの向き合うパソコンの画面に、事故を起こした自動車の車両が映し出されているのが遠目に見える。旧ビッグモーター(BM)が保険金請求のために事故車両や修理パーツなどを撮影したもので、不正請求に使われた可能性がある画像だ。
ここは東京・お茶の水にある三井住友海上火災保険の本社。10階にある一室は、独特の緊張感に包まれていた。請求事案の実に3割超とされる、旧BMの不正請求の有無を一つずつ検証する現場の最前線だからだ。
「これを見抜くことはできますか」
調査の専門チームを率いる幹部社員が、1枚のサンプル写真を示した。トヨタのプリウスのボンネットが開かれ、中がむき出しになっている。2本の太いチェーンで車体の側面を両脇から引っ張っている様子が写っていた。
「タワー引き」のように見えた。車のフレームがゆがんだり、損傷したりした際、専用の器具で引っ張って直す作業のことだ。チェーンが車体にしっかり固定され、おかしな点はない。一般的な修理の様子にみえる。
「これは不正の疑いが濃厚です」
幹部は、こう言い切った。
幹部の説明によると、根拠は…