(18日、第97回選抜高校野球大会1回戦 健大高崎3―1明徳義塾)
前年優勝校と四国王者による1点をめぐる攻防は、同点のまま延長タイブレークへ。健大高崎(群馬)の主将、加藤大成はこう思った。
「自分たちにもってこいの試合だなって」
昨秋の関東大会決勝では、後に明治神宮大会を制する横浜(神奈川)にサヨナラ負けした。敗因はバントだった。タイブレークの十回、健大高崎は無死一、二塁からバントで送れず、無得点。その裏、横浜の先頭打者はきっちり初球で犠打を決め、決勝点につなげた。
チームは明治神宮大会への切符を逃し、涙に暮れた。青柳博文監督は部員が最も使うという練習場のトイレに、この敗戦を伝える新聞記事を貼りつけた。
1点を守り、1点をもぎ取る――。冬場は無死一、二塁を想定した実戦形式の練習を、秋までの倍以上やったという。
迎えた春。先攻なのは、あの日と同じだった。十回、6番の伊藤大地が打席へ。青柳監督のサインを見て、「この場面のために冬(の練習を)やってきた」。バットを寝かし、相手左腕の低めへの変化球をきっちり三塁寄りに転がす。続く栗原朋希が中前にしぶとく運び、好走塁で二塁打に。六回以降無得点が続いた展開で、この1点は効いた。
この試合、秋の公式戦で出場校中最多の3本塁打を放っている秋山潤琉(ういる)が2度、初球で犠打を決めた。前年に優勝したチームほどの打力はないと自認するからこそ、1点を大事にしてきた。試合巧者との小技の応酬を制し、加藤は言った。「これが、今年の健大です」