「家族と一緒にいる。そのための手段が私たちにとっては、酪農だった」
日系アルゼンチン人のグラシエラアナさん(通称ガチュさん)と小松健治さん夫妻が、酪農家になると、決意したのは約20年前だった。
1人目の娘が誕生したばかり。だが、システムエンジニアとして働いていた健治さんは、娘を抱く余裕がほとんどなかった。
月の残業時間は300時間ほど。帰宅後は食事も取らずに寝てしまう。それでも、体重は20キロも増え、たまにある休みは1日中寝て終わる。
「こんな家族は嫌だ。もっと健康的に生きなきゃ」。ガチュさんが転職を勧めた。
友人のホームパーティーで出会った2人。ガチュさんは、北海道大学で建築系の研究中で、健治さんは、南米を旅してきたばかりだった。
忙しすぎる日々に、健治さんは当時の旅を思い出す。家族と一緒に過ごす時間を何よりも大切にしようとする人をたくさん見てきた。
パソコン相手の仕事から離れよう。「動物相手がいいかもな」。
酪農家を目指すと決めた。出会った時には想像もしなかった選択だった。
4年間の実習を経て、北海道…