今年でデビュー30周年を迎えた演歌歌手の水森かおりさんは「ご当地ソングの女王」とも呼ばれています。歌い続けてきたその数は、45都道府県・150曲超にも及ぶそうです。各地の風景を詠み込んだ歌には、どんな味わいがあり、なぜ喜ばれるのか。自身は東京出身という水森さんが、全国を歌い歩きながら感じていることを聞きました。
東京出身がコンプレックスだった
地方の風景を詠み込み、人情や哀歓をつづるご当地ソングを歌い続けています。これまでに45都道府県、150超の曲を歌いました。恋に破れた女性が「あなた」を忘れるための一人旅、などを描いた演歌です。
最初は1999年の「竜飛岬」という曲でした。地元の夏祭りで披露する際、皆さんに納得してもらえるだろうかと不安でしたが、「ふるさとの歌ができたみたいで励みになる」などと喜ばれました。
しかし、土地紹介の歌ではありません。歌詞の女性は、なぜここに来たのか。その土地の風やにおいを肌で感じながら、傷心がどう癒やされていくのか……。歌を聴いて下さる方々が、その心模様をたどり、物語の行間を想像で埋めていく。そうして情感が立体的に立ち上がる。土地土地の風景は、その助けになるように思います。
私自身は東京都北区の出身です。小さい頃は、友だちが田舎に里帰りするとうらやましかった。デビュー後には「東京出身者は、故郷に錦を飾るというハングリー精神がない」と言われたことも。いわば東京コンプレックスを感じていました。都会の人は、地方を面白おかしくネタにしているようでも、実はうらやましいのではないでしょうか。
歌いながら各地を回っている…