「くまとやまねこ」(河出書房新社)

記者コラム 「多事奏論」 文化部(大阪)記者 河合真美江

 じいじが亡くなったのは中学1年の夏でした……。関西学院大3年の松本真歩さんは9年前を振り返って話した。

 「期末テストが学年4位だった!」。祖父母の家に戻り、真っ先に報告した。「ようがんばったな~」。じいじは笑顔いっぱいだった。翌土曜日、昼過ぎに学校から祖父母の家に帰ると、車が何台もとまっている。目を赤くした叔母が言った。「じいじ、亡くなったよ」。和室に行くと、じいじは眠っていた――。

 松本さんにとって、じいじは避難場所のような人だった。両親は共働きで看護師の母親は夜勤もある。近くの祖父母の家によく泊まっていた。いつも優しく、話をうんうんと聞いてくれた。

 母親にとっても大切な相談相手だった祖父の急な病死。「私がしっかりしなきゃって、気を張ってきたのかもしれません。13歳の時の悲しみがブワーッとよみがえってしまった」

 私は7月、さまざまな人の死…

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