江原信さんは「じゃがりこ」について「夢は始まったばかり。海外でもたくさんの人に食べてもらいたい」と笑顔で語る=東京・丸の内のカルビー本社、慎芝賢撮影

 「じゃがりこ」を世界に広めたい! カルビー社長の江原信さん(66)は、そんな夢を掲げる。商社、ヘルスケア会社を経て、「人々の健康に役立つ商品づくり」に引かれて転職してきた。国内の菓子市場が成熟するなかで、将来に向けた布石は常に10個考えておく。この姿勢の原点は、かつての上司の教えにあったと語る。

課長に注目していると…

 20代後半、営業の仕事がおもしろくなってきた。伊藤忠商事で化学品を担当する。だが目の前の業務を手当たり次第に片づけていくだけだった。だれよりも積極的に動く上司の課長に注目していると、顧客を訪ねる際に言われた。「常に10のプロジェクトを持て」。まずは優先順位をつけよ。現状に満足せず、次々と新しい提案をせよ。そう聞こえた。

 頭に浮かんだのは五つほど。ひとつが、取引先の石油精製会社が化学品に参入する案件だった。チームの一員として、データをそろえる役割を担った。「頭を整理して進められました。すこしは役に立てたかな」

 いまでも正月になると、新年に取り組む10のプロジェクトを考える。半年で見直す。「半分成功すればいいほうですが、10ぐらい持たないと進化できないと思っています」

 思い出は米ジョンソン・エンド・ジョンソンに転職後、2004年の案件。血管を広げる金網の筒、ステントに免疫抑制剤を塗った新製品を売り出す。使った時点ではなく引き渡した際に代金を受け取る方法に切り替えた。使われなければ自らの損になると反発する卸売会社を説得。注文量が適正になり、使用期限を過ぎて廃棄される数が減った。「医療界が待ちに待った製品です。むだなく届ける仕組みを実現できました」

「次の社長に決まったから」

 7年後、カルビーに移る。転…

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