アナザーノート 経済部次長・江渕崇
日本化(Japanification)。この言葉が経済をめぐって使われる場合、たいていはよろしくない意味である。停滞が長引き、物価や賃金、金利が上がりにくくなることを指す。
欧米の調子が悪くなりかけた際、「日本のようにはなりたくない」と憂える文脈で語られる。私たちメディアも、半ば決まり文句のように「失われた30年」と過去を形容してきた。
そんな「定説」にあらがうかのように、「日本経済は失われてはいなかった」と主張する経営学者が米国にいる。カリフォルニア大サンディエゴ校のウリケ・シェーデ教授。ドイツ出身で、日本にも通算9年以上住んだ日本企業論の専門家だ。今春には『シン・日本の経営 悲観バイアスを排す』(日経プレミアシリーズ)を出版した。
ITや人工知能(AI)、金融といった分野で先端を走り続ける米国と比べれば、日本の出遅れは明らかにも思える。「停滞などしていない」とは、どういうことなのだろう。
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「確かに米国からみれば異様なほどに遅い変化でした。しかし、遅いことは停滞を意味しません。日本企業は時間をかけながら着実に変革を重ね、ここに再興したのです」
その軌跡をシェーデさんは、1990年代に大相撲で活躍した元小結、舞の海にちなんで「舞の海戦略」と呼ぶ。小柄ながら機敏な動きで多彩な技を繰り出し、巨漢の小錦や曙の向こうを張った人気力士だ。
かつての日本企業は多角化に…