Smiley face
文字おこしアプリや補聴器を使いながら、手話で会話する原告の中学生=2024年5月11日、札幌市、上保晃平撮影
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 幼い頃から使ってきた「日本手話」で授業を受けられず、学習権を侵害されたとして、聴覚障害がある北海道札幌聾(ろう)学校(札聾)の小学生ら2人が道に各550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、札幌地裁である。

  • 第1言語の手話「奪われる悲しさ知って」 ろうの中学生が求めた権利

 「本当は札聾にずっと楽しく通いたかった」。いまは別の中学校に通う女子生徒(13)=札幌市=はそう話す。

 生まれつき聴覚障害のある生徒は、1歳の時に札聾の乳幼児相談室で、初めて日本手話に触れた。日本手話は、独自の文法体系を持ち、手の形や動き、表情などを組み合わせて意味を表す。

 両親は耳が聞こえる聴者で、手話の知識はあまりなかった。ただ、日本手話による絵本の読み聞かせに強く興味を示す娘を見て、意思疎通に最適だと感じた。

 「親として、娘の一番の理解者でありたい」。日本手話は、家庭内の共通言語となった。

 記事の後半では、日本手話と日本語の読み書きのバイリンガル教育に取り組む明晴学園の市田泰弘校長に、ろう教育の課題について聞いています。
 市田校長は「手話を母語として明確に位置づけ教育できれば、ろう者の言語能力や学力をめぐる問題はなくなる」と話しています。

 札聾の幼稚部に入った生徒は、そのまま小学部に進学。日本手話での教育が受けられるクラスを選択した。

 特に好きだったのは国語の授業だ。物語の主人公の気持ちを考え、日本手話を使って子ども同士で議論する。たった一人の意見で、クラス全員の考えが変わることもあった。議論を通して気づきを得ることが楽しかった。

 5年生となった時、札聾に異変が起こった。授業で徐々に日本手話が使われなくなっていき、日本語で口の動きを読み取って声に出す「口話」や、日本語の文法に合わせて単語と手の動きを対応させる「日本語対応手話」の比率が増えた。

 日本手話が堪能だった担任教…

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