「家計が破綻(はたん)しかねなかった。やむを得ない選択だった」
埼玉県に住む男性(63)は最近、自宅のマンションを売却する決断をした。
住宅ローンはまだ1600万円余が残る。銀行との契約では、12年後の75歳までに完済する計画だったが、返済に充てる資金の見通しが立たず、手放さざるを得なくなった。
バブル直前の1985年に機械部品メーカーに就職した。3歳下の妻と結婚し、2人の息子も授かった。マンションを購入したのは、課長に昇進した40歳の時だ。
課長昇進でマイホーム購入も…
4500万円の購入資金のうち、預金から500万円を頭金に充て、残りの4千万円を、返済期間35年の住宅ローンとして銀行から借りた。当初10年間は0.5%の優遇金利が適用されるプランで、毎月の返済額は10万3834円。家計に余裕があれば繰り上げ返済しつつ、定年時点で残っているローンは退職金で一括返済すればいいと考えた。
46歳の時、長男が私立の中学校に進み、小学生の次男も学習塾などに通い始めた。教育費の負担が増したため、会社に退職金の前払い制度の利用を申請すると、毎月の給与に3万円が上乗せ支給された。
家計は何とか持ちこたえていたが、2008年、リーマン・ショックに襲われた。会社の業績が落ち込んで、ボーナスが激減。個人で投資していた株式にも大きな損失が出た。
住宅ローン返済に行き詰まらないため何に気をつければいいのか。記事後半で専門家がアドバイスします
- 迫る住宅ローン危機 「フラット35」利用 40代以上6割に
50歳で部長に昇格すると…