ティラノサウルスの復元模型などの前に立つ真鍋真さん=群馬県富岡市の県立自然史博物館

 長年、恐竜の研究を続ける前国立科学博物館副館長で古生物学者の真鍋真さん(65)は「恐竜博士」と呼ばれますが、恐竜の世界に出合ったのは実は大学に進んでから。子どもの頃、夢中になってやり遂げたものは、特になかったそうです。そんな真鍋さんが見いだした「学び」の本質とは。経験を交えて語ってもらいました。

何かがわかるワクワク

 研究をしていると、人との出会いや言葉のキャッチボールが楽しく、何かがわかるワクワクと新しいクエスチョンマークの連鎖が途切れることはありません。

 恐竜について講演で話すとき、まだ評価が定まっていない仮説の場合は「新しい化石が出たりして、変わるかもしれません」と言い添えます。

 大人は年齢が上がるにつれ「結局、わかってないじゃん」となりがちです。でも、子どもたちは「まだまだわかっていないことがたくさんあってワクワクする」という反応が多い。

 都立高校2年生のとき、地学の授業で、自分でテーマを決めて研究リポートを出す課題があり、友達と岩手県の鍾乳洞「龍泉洞」に行きました。地図を見ながら外に出かけられる地学は、旅行が大好きな私にぴったりだと思いました。

 好きな科目ができ、魅力的な先生が身近にいたので、高校の先生になるのもいいなと、大学は教育学部地学科へ。旅行に役立つと英語も勉強をしていたら、4年生のときに奨学金を得て1年間カナダへ留学できました。

「同じ化石が見つかるよ」留学先で盛り上がる

 留学先で、日本での研究を発表する機会がありました。プランクトンみたいな微小な化石で地層が堆積(たいせき)した時代、三畳紀やジュラ紀などを示す「示準(しじゅん)化石」を手がかりに、埼玉県秩父市のある山がどうできたかを研究していました。

 「知らないところの話だから、つまらないだろうな」と思いつつ話し始めると、「カナダのロッキー山脈も同じ時代の海でつながっていたから同じ化石が見つかるよ」と盛り上がり、私も大学院でもっと勉強したいと思いました。

 留学から戻り、指導教官に大学院で勉強を続けたいと相談しました。すると、私が研究していた地層からは完全度の高い化石がたくさん見つかっているわけではないので、世界に発信するには分が悪いと言われました。

陸上への進化を示す脊椎(せきつい)動物の復元模型を手にする真鍋真さん。左は手足をもつイクチオステガ、右はひれをもつティクターリク=群馬県富岡市の県立自然史博物館

 がっかりしていると、隣の研究室だった、長谷川善和教授(現・群馬県立自然史博物館名誉館長)が「日本で恐竜の化石が出てきているが、研究する人がまだいない。恐竜、やってみない?」と声をかけてくれました。

 海外で面白い成果がどんどん出てきていたので、恐竜の世界に飛び込みました。

 米エール大大学院での指導教…

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