Smiley face
写真・図版
町なかを巡行する青柏祭の「でか山」=2025年5月5日、石川県七尾市、筒井次郎撮影

現場へ! 能登の文化財はいま(4)

 エーンヤー、エーンヤー。

 5月の大型連休に、石川県七尾市で力強いかけ声が響いた。「でか山」と呼ばれる高さ12メートル、重さ20トンもある山車を曳(ひ)く、能登を代表する祭り「青柏祭(せいはくさい)」だ。

 3町が1基ずつ、300人がかりで曳く。細い路地では民家の屋根すれすれを通る。交差点で90度の方向転換をする辻回しには、見物客から拍手が湧いた。

2年ぶりの祭り「復興を発信」

 山車には「能登半島地震復興祈念」の文字を掲げた。「能登が元気に復活し始めていることを全国に発信できました」。青柏祭でか山保存会の丸岡俊宏会長(67)は話した。

写真・図版
青柏祭でか山保存会会長の丸岡俊宏さん=2025年5月5日、石川県七尾市、筒井次郎撮影

 でか山の起源は室町時代にさかのぼる。七尾を拠点とした能登畠山氏は都の文化の移入に熱心で、祇園祭の山鉾(やまほこ)にならって山車を奉納したのだそうだ。

 国の重要無形民俗文化財に指定され、ユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」に登録された全国33件の祭りの一つでもある。

 地震に見舞われた昨年は中止となった。道沿いの民家や電柱は傾き、路面には亀裂。山車の組み立てや飾り付けに携わる人手も足りなかった。

 「帰る家のなくなった人もいましたし、僕らは災害復旧にかかりっきりでした」と参加した和田内勝臓(かつぞう)さん(56)。「コロナ禍でも2年休み、次世代への継承という点から、今年は確認しながらやりました」。実家が全壊した外谷由河(ゆうが)さん(26)は「復興していく姿を、今後も日本一のでか山を通して全国に伝えたい」と語った。

 ただ、復活したものの、心配…

共有