(12日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 東海大相模4-0富山商)
「六回からプレーボールのつもりでやろう。先に1点とった方が有利だぞ」
五回裏を終えたクーリングタイム中、東海大相模の原俊介監督は、選手たちに声をかけた。初回に先制して以降は打線がつながらず、停滞していた流れを変えるための一言だった。
六回表、1死一塁。打席に入った7番打者の和田勇騎(3年)は、右ももをひじにつくほど高く上げ、バットを構えた。「股関節を自分の気持ちいい位置にもっていくためのルーティン」。初球から全力で振ると決めていた。外角に来た直球を逆らわずに強振し、「打った瞬間、抜けたなと思った」。左中間に運び、チームは追加点。流れが再び東海大相模に傾いた。
2年秋までは好調で、不動の先頭打者だったが、一冬を越えて思うような結果が出なくなった。それでも守備範囲の広さ、積極的にチームを鼓舞する声かけなどの貢献が評価され、スタメンから外されることはなかった。「苦しい時も、信じて使い続けてくれた原先生に感謝しかない」
6日前、打撃の不振を見かねた原監督から「振り切れば絶対にいい結果が出る」とアドバイスされた。どうすれば打てるのかと悩んでいたが、「考えすぎていたのかもしれない。とにかく振り切ろう」。腹を決めた途端に調子が上向いた。
初戦で見せた会心の一打に、「気持ち良かったっす」と屈託のない笑みを見せた。「どの試合も『特別』と思うと力んでしまう。自分のスイングをするだけです」(手代木慶)