京都国際―西日本短大付 八回裏、ベンチから声を出す西日本短大付の高峰駿輝主将(右から2人目)=小宮健撮影

 西日本短大付の夏が終わった。目標としていた1992年夏以来の全国制覇はかなわなかったが、強打を武器に2勝をおさめ16強入りした。選手たちの激闘を振り返る。

 初戦から、夏の甲子園の怖さを知った。相手は秋田代表の金足農。2018年夏に気迫のこもった投球で甲子園を湧かせた吉田輝星投手(オリックス)の弟、吉田大輝投手(2年)をエースに擁するチームだった。

 6点リードで迎えた九回表、球場は金足農を後押しする手拍子に包まれた。勢いに乗る相手打線に3連打を許し、失策も相次ぐ。点差は2点まで詰め寄られた。

 それでもエースの村上太一投手(3年)は「苦しいときこそ笑顔」と意識して笑みを絶やさず、後続を断ち、完投した。西村慎太郎監督は、選手たちが「甲子園独特の怖さや難しさを味わった」と振り返り、「(最終回は)相手のペースになったが、よく踏ん張ってくれた」とたたえた。

 2回戦では三重代表の菰野(こもの)を「低く強い打球」で圧倒した。木製バットを使った練習で鍛えたミート力を発揮し、躍動したのが2年生たちだ。

 初回から先頭打者の奥駿仁(はやと)選手(2年)、続く井上蓮音(れお)選手(2年)がバスターエンドランで先制点を挙げて流れをつかみ、三回には安田悠月選手(2年)が2点適時三塁打を放つなど、打者12人の集中攻撃で一気に8点を奪った。試合終盤にも斉藤大将(だいすけ)選手(2年)らの適時打で4点を追加し13―0で快勝した。計10打点のうち9打点を2年生が挙げた。

 8強入りをかけた3回戦では、春の近畿大会を制した強豪の京都国際を相手に、3年生が意地を見せた。

 甲子園入りしてから7打数1安打と不調だった高峰駿輝(としき)主将(3年)が2安打と気を吐き、七回からは尾方聡馬投手(3年)が四死球0の好投でチームをもり立てる。九回には1死一塁で代打の松門憲蔵選手(3年)が安打を放ち一、二塁の得点好機を作った。

 この好機で代打で起用されたのも3年の北村康晟(こうせい)選手だった。今春までほとんど試合に出られず、ボール拾いやスコアボードめくりなど仲間たちの補助をしていたが、この夏、選手間投票でベンチ入りメンバーに初めて選ばれた。

 「実力」だと部員たちはいう。福岡大会開幕前の紅白戦で安打を量産して部員全員に認められた。「試合にも出られないのに、ずっと(バットを)振っていた。その姿に刺激を受けた」と同級生は語る。

 福岡大会では出番がなく、甲子園で迎えた初めての打席。三塁線へ転がしたが、好捕され、試合は終わった。

 選手たちに、西村監督が繰り返し伝えてきた言葉がある。「どんなときでも、演じろ」。それを体現するかのようにこの夏、選手たちは自らの役割を全うした。

 もともと静かで口数の少なかったという主将の高峰選手は「自分が変わらなければ、チームも変わらない」と、苦手だった厳しい指摘や声掛けを徹底して続けた。正念場での制球に課題のあったエースの村上投手は、笑顔を作って自らを鼓舞し、夏の大会を戦い抜いた。

 京都国際との試合で登板した中野琉碧(るい)投手(2年)は言った。「先輩たちを越える。もちろん、日本一が目標」。次の舞台への挑戦は、もう始まっている。(太田悠斗)

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