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精神看護専門看護師であり、公認心理師でもある長江美代子さん=2024年3月4日、名古屋市、大久保真紀撮影

 性暴力を受けると、被害者は多くが自責の念にさいなまれ、人を信じられなくなる。周囲の人がよかれと思ってしたことについても、逆に反発し、人間関係を壊して孤立してしまうことも珍しくない。被害当事者が安心して治療につながり、回復していくためには何が必要なのか。

警察への通報と心理教育

 性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援センターなどで被害者を支援してきた看護師で公認心理師の長江美代子さん(67)は、「被害者は被害の事実を受け入れることが難しく、多くができればだれにも知られたくないと思っている」と指摘する。そのため、「何もなかったことにしたい」という気持ちが強く、警察への通報を拒否することも多いという。

 しかし、「自身が受けた不当な被害について届けを出して加害者が罰せられることは、被害者の傷ついた心の回復に大きく影響する。たとえ、期待するような結果に終わらなかったとしても、何か行動を起こしたという経験は被害者にとっては大きなエンパワメントになり、回復を助ける」と話す。

 一方で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)についての心理教育も大切とする。1カ月しても眠れない、おなかがいたい、電車に乗れないなど苦しんでいることがあれば、それを聞き、PTSDになるとそうした症状があることを伝えることが重要という。

 「被害者は自分がおかしくなったのではと不安になっているので、性暴力を受ければそうした状態になることがあると説明することで、少し落ち着く」

自責の念に苦しむ被害者にかける言葉は

 被害者はほとんどが自責の念…

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