ドキュメンタリー映画「黒川の女たち」のメガホンをとった松原文枝監督=2025年5月21日、東京都港区、大貫聡子撮影

 なかったことにはしない。声をあげても封じられ続けてきた女性たちの強い思いが、旧満州からの引き揚げ時に起きた性暴力を歴史に刻んだ。

 戦前の国策移住計画「満蒙開拓」で、岐阜県黒川村(当時)から旧満州(現在の中国東北部)に入植した黒川開拓団。団員の女性たちは敗戦後、団の幹部から「性接待」の名のもとにソ連兵に差し出され、性暴力を受けた。

 だが、被害が碑文に記されるまでには70年以上の時間がかかった。

 沈黙を強いる周囲にあらがい事実を明らかにした女性たちの姿を追ったドキュメンタリー映画「黒川の女たち」が12日から全国公開される。松原文枝監督に作品に込めた思いを聞いた。

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 取材のきっかけは、2018年8月に地元の公民館で開かれた証言集会の様子を伝える新聞記事だった。

 口を真一文字に結んだ1人の女性の写真に松原さんの目は釘付けになった。

 女性の名は佐藤ハルエさん(…

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