「みんなが間違っていることもある」。そう話すのは今年、プロデビュー戦に挑んだ30代のボクサーだ。彼には、聴覚障害がある。
岡森祐太さん(31)の障害は、「感音性難聴」というもの。小学生の頃には、補聴器をつけても授業はよく聞き取れなくなった。一番前の席で、先生の口の動きを見ていた。相手の話が聞き取りにくくても「場の雰囲気を壊さないよう」にと、何となく切り抜けてきた。
高校で日本拳法部に入った。防具を着けて1対1で向き合う格闘技。「何となく」は通用しなかった。突きや蹴り、投げ技、寝技など、多くの選択肢がある。相手が何を考え、何を繰り出すのか、想像して戦う必要があった。
「ごまかしのないコミュニケーション」との出会い
岡森さんは「その人のことが…