(15日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 鶴岡東0―1早稲田実)
早稲田実(西東京代表)が延長十回タイブレークで鶴岡東(山形)に競り勝った。早稲田実の和泉実監督との試合後の主なやりとりは以下の通り。
――今の気持ちを。
いやー、びっくりしました。もうこのチームで、こういう展開は今まで一回もないものですから。むこうのピッチャーが社会人野球の人とやっているような、上手に打たされて、自分のバッティングをさせてもらえないですから。四球もくれませんし、途中までパーフェクトをくらっちゃうんじゃないかっていうくらい、本当に上手なピッチャーで。
ただ、そういうピッチャーと対決することで、(エースの)中村も触発されて、こんな成長した中村は見たことがないので、よう放ってくれました。本当に甲子園ってすごいところですね。
――最後決めたのも中村君。
10回を投げきって足をつって、代打とかどうしようかなといろいろ考えたんですけど、ここまで集中している中村に、足のつりもなおしてくれたんで。中村にかけようと思いました。初球からいってくれて、今日は頼もしいエース誕生という感じがしました。
――打球が飛んだ瞬間は。
見えなくて。音だけ聞こえたので、どこかにいったなと思ったんですけど、いい音だったので、みんなもわーって言ってたから。ほんとにようやりました。
――投手戦が中村君の好投を引き出した。
桜井君がいいピッチングなんで、1点が致命傷になると。中村も集中力あげて、ピンチはありましたけど、よく腕を振ってくれました。
桜井君はストレートもぬき球もスライダーもゆるいカーブも全部コントロールできて、全部を操っている感じがあった。2回りくらい遊ばれている感じがした。
早打ちになっちゃう感じがしたので、とりあえず、全体では100何球を放らせるような環境をつくろうといったけど、どんどんおいこまれる。彼のペースで前半はいきましたね。
桜井君は高校日本代表候補と聞いていましたから。(中村は)同じ左腕には負けられないという気持ちはあったのかなと思います。それが高めあって両方がナイスピッチングしたんじゃないかと思う。
――最後(十回裏)の攻撃前、円陣で鼓舞していた。
もう俺が耐えられないから、この回で決めてとお願いしました。
――次に向けて。
今終わったばかりなので、相手もわかりませんし、なんともいえない。ただ、この勢い、この経験は間違いなく彼らを強くしている。まして、こういう展開で勝った試しのないチームが、今日勝てたのは大きい経験になっている。次どうなるかわかりませんが、期待したいと思います。
――中村君の活躍は予想していたか。
予想していないからびっくりしている。ポテンシャル(潜在能力)は持っていながら、自分から崩れてしまうところがあるので、桜井君に引っ張られたところもあると思う。ピッチャー同士が高めあって、意地というかですね。
前の話ですけど、斎藤(佑樹)とマー君(駒大苫小牧の田中将大)は、マー君のすごさに斎藤が応えて、2人で高めあったところであんな試合ができた。まだまだそれは先なんですけど、今日は間違いなく桜井君のピッチングに触発されて、集中力が高まったと思います。
――中村君の投球はどこかよかったか。
コントロールですかね、無駄な四球をださなかった。特にストレートが右バッターならインサイド、左バッターなら遠目に、そこの生命線がよく放れていたと思います。数字以上に相手バッターのスイングをみると、差し込んでいる感じがあった。
公式戦でここまで放ったことはあるがいつも四、五回くらいで危ないピッチングになる。4、5点を取られるなかで戦ってきた。まさか完封とは想像がつかなかった。
――中村君の成長は。
厳しい場面を西東京大会でもやってきて、甲子園の初戦でも放りましたから、そういう経験が、成長につながっていると思う。
――中村君はどんな子か。
こだわりはすごくある、ピッチャーとして。ピッチャーたるものこうあるもの、というのを持っている。
――負けず嫌いか。
それはあると思います。公式戦だと負けられないというのがまずある。向こうのピッチャーがああいうピッチングすれば、一つのピンチで試合を決められちゃうことがありますから。1球1球集中力をもってやれたと思います。
――中村君が打席に入る前にかけた言葉は。
なんか言ったかな、お前にかけている、とか励ましですよね。ただ、腹はきまっていたんでしょう。バッといきましたからね、初球から。
――タイブレークの十回で山中君が盗塁を刺した。
キャッチャーは大会前に本決まりして、経験不足なんです。中学時代もやっていない。去年の秋に捕手をやらせていたが、色々試していた。6月に入って、もう一回(捕手に)戻した時に、もともと声を出さない子だったが、元気よく、少し声を出して指示も出るようになった。下級生で先輩に遠慮していたのかなと思うけど、変わったなという感触があったので、それから背番号2で腹を据えた。
甲子園という場所で集中力を高めていいプレーをしてくれた。山中に限らず、みんなをうまくしてくれているなと実感している。
――リード面は。
2人でよく話し合う。今日は中村のストレートが低めに伸びているから、それを大事に使いながら、いつもは意外と中村が主導権握って首を振るんですけど、今日はそういう姿があまりなかったから、2人の呼吸が合ってきたのかなと思う。