社会学者の小谷敏さん

 「効率的に働こう」「生産性を上げよう」――。働いていると、「やる気を出せ」とお尻をたたかれ続けているような感覚に陥ることはないでしょうか。ところが社会学者の小谷敏さんは「『やる気を出せ』と言われているうちはまだよかったのかもしれない」と話します。どういうことでしょうか。

「若者たたき」が象徴するもの

 日本には、怠けることを許さない、勤勉こそ価値あるものとする精神的な風土があります。そのため、「やる気がない」と見なされる者たちは、バッシングの対象になってきました。

 象徴的なのが「若者たたき」です。フリーターやニート、パラサイトシングルといった言葉が、正規雇用で働かない若者や、親に経済的に頼らざるを得ない独身者などに対して批判的に向けられました。「ゆとり教育」を受けた世代の若者が社会に出ると、「これだから『ゆとり』は」と馬鹿にされもしました。

 勤勉は古くからある道徳的価…

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