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白樺学園―創成館 一回裏創成館無死、山口はチーム初安打を放つ=藤尾明華撮影

(11日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 白樺学園0-1創成館)

 三回裏1死、創成館の攻撃。山口烈選手(3年)は肩の力を抜いて打席に入った。

 「自分が出ないとチームに勢いが出ない」。稙田龍生監督からは、まっすぐか、スライダーか、「狙い球を絞れ」と指示を受けていた。

 狙っていたまっすぐを振り抜くと球は外野へ。右翼手が後逸するのを確認すると、一気に三塁へ走った。「よっしゃきたー」と心が沸き立ち、三塁までの時間がとても楽しかった。

 走塁の判断は、チームが重視している場面を想定した練習が役立ち、難しくなかったという。

 その後、向段泰一郎主将(3年)が犠牲フライを放って、山口選手は本塁に生還。この1点が決勝点となった。

 山口選手のこれまでは順調ではなかった。1年生の冬から、ひじ痛に悩まされた。原因が判明して、手術したのは9カ月後だった。

 手術後、3~4カ月して練習を再開。全体の練習が終わっても居残って1時間半ぐらいバットを振り込んだ。「今日はそれが報われたのかも」と話す。

 「今、野球をしているのは両親に恩返しするため」と話す。グラブやスパイクなど必要なものがあるとすぐに買ってもらえた。母は練習試合には必ず来てくれた。

 関東方面に長期出張している父は「地方大会には遠くていけないけど。甲子園なら」と言ってくれた。その約束をかなえようとがんばった夢舞台だった。この日、父母も兄弟もスタンドで声援を送ってくれた。

 チームは昨年に続いて初戦を突破。「甲子園を楽しみたい」と笑顔が広がった。(天野光一)

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