札幌市白石区民センターで15日、「アイヌの史実を学ぶ会」が主催した講演会とパネル展に対し、市民団体が「アイヌ民族へのヘイトスピーチにあたる」として抗議行動をした。
講演会は、医師の的場光昭氏を講師として「アイヌ副読本教材を検証! 皆様と一緒に学びましょう」「小学生・中学生の父兄同伴大歓迎! 親子で学びましょう」と案内されていた。
パネル展では、豪州のアボリジナルピープルや米国のネイティブアメリカンを先住民族として例示しつつ、「しかし、日本におけるアイヌ民族は全く事情が違う。北海道にも、アイヌ以前に日本人共通の祖先・縄文人が1万年以上も住んでいた」などとする主張が掲示された。
これに対し、ヘイトスピーチに反対する市民団体「クラックノース」の呼びかけで集まった約30人が会場の建物前で抗議。「アイヌ民族否定論はヘイトスピーチ」「アイヌ差別は違法」といったカードや横断幕を掲げ、「歴史をねじ曲げ、先住性を否定するデマを流すな」などと訴えた。
官房長官の下に設置された有識者懇談会が2009年に出した報告書は、国家の統治が及ぶ前から、国家を構成する多数民族とは異なる文化とアイデンティティーを持って居住し続けている民族について先住民族と定義し、アイヌ民族も当てはまると指摘している。
これを踏まえた19年施行のアイヌ施策推進法は、アイヌ民族を「先住民族」と明記し、「アイヌであることを理由として、差別やその他の権利侵害をしてはならない」と定めている。(上保晃平)