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 夢を追い続けながら、夢を奪われるかもしれない線上で戦い続ける人がいる。棋士養成機関「奨励会」に在籍し、11日に指されている第82期将棋名人戦七番勝負第1局の記録係を務める斎藤優希三段(27)。再びの三段リーグに臨む前に思いを聞いた。

名人戦第1局の記録係を務める斎藤勇気三段=2024年4月10日午後2時59分、東京都文京区のホテル椿山荘東京、北野新太撮影

 棋士養成機関「奨励会」の規定には、冒頭に「年齢制限」の項目がある。

 「満21歳の誕生日までに初段、満26歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段になれなかった場合は退会となる」

 26歳までに四段に、つまり三段リーグを突破して棋士資格を得ないと強制退会になる。幼い頃から抱き続けてきた夢に終止符を打たなくてはならなくなるのだ。

 文言には続きがある。

 「ただし、最後にあたる三段リーグで勝ち越しすれば、次回のリーグに参加することができる。以下、同じ条件で在籍を延長できるが、満29歳のリーグ終了時で退会」

 たとえ26歳を迎えても、全18局の三段リーグで勝ち越せば(10勝8敗以上)続くリーグも指せる規定である。

 

 昨年12月、27歳の斎藤優希は窮地に陥っていた。

 26歳を迎えた第72回リーグは勝ち越し規定で切り抜けたが、第73回は7回戦を終えて1勝6敗。残る11戦を9勝2敗で乗り切らなければ夢は途絶える。危機を迎え、追いつめられていた。

 「最初に2連敗をして……後悔ばかりしていました。優勢の将棋を落として、あの時、あの手を指していたら……って、ずっと。気が付いたらイチロクになっていて」

 不安と恐怖で心が崩れ落ちそうになる寸前、師匠の深浦康市九段から連絡があった。

 「優希、ちょっと会わないか?」

 待ち合わせて向かった先は…

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