取材に応じる米シンクタンク、軍備管理協会のダリル・キンボール会長=2023年4月17日、ワシントンの軍備管理協会本部、下司佳代子撮影

 米軍によるイランの核施設3カ所への空爆をめぐって、米国が攻撃の目的とした「イランの核の脅威の阻止」にどれほどつながるのかを疑問視する見方が出ている。核問題に詳しい米シンクタンク「軍備管理協会」のダリル・キンボール会長に、攻撃の評価やイランの核開発問題をめぐる今後の課題を聞いた。

  • 被害深刻なイラン、トランプ政権が迫るディール 不透明な停戦の行方

 ――米軍はイランの核施設3カ所を空爆し、トランプ大統領は「主要な核施設は完全に破壊された」と主張しました。核施設への影響をどうみますか。

 「米国の空爆によって地上の核施設は深刻な被害を受けたとみられているが、フォルドゥの施設は地下深い。(米軍が用いた新型地中貫通弾)『バンカーバスター』GBU57の貫通力にも物理的な限界がある。地下の核施設の被害の程度や、イランが保有してきた高濃縮ウランがいまどこにあるのかを正確に把握するには、さらに時間がかかるだろう。国際原子力機関(IAEA)による現地の査察も必要だ。イランが査察を受け入れるには、イスラエルとイランの間の停戦が欠かせないだろう」

 「今回の攻撃で、イランの核開発計画は数カ月、あるいはそれ以上、遅れたとみられる。だが米国が攻撃に踏み切ったことで、(核開発問題をめぐる協議を行ってきた)米国とイランの信頼関係は壊れ、イランは核開発計画を再開するという決意を固めたのではないか。数週間以内に、イランが核不拡散条約(NPT)からの脱退を発表するかもしれない。米国の軍事行動によって、イランの核武装を阻止することがこれまで以上に困難になった可能性がある」

「イランへの攻撃は、国連憲章違反だ」

 ――米軍がイランの核施設への攻撃に出たことをどう評価しますか。

 「2018年に第1次トラン…

共有
Exit mobile version