記者コラム 「多事奏論」 編集委員・稲垣康介
心の叫びは、この主張に凝縮される。
「蛮行をやめないロシアは許せない。パリ五輪にも出すべきではない」
この2年余り、取材したウクライナ選手の声だ。北京冬季五輪で「戦争反対」のメッセージを掲げたスケルトン選手、東京五輪でウクライナ勢唯一の金メダルを取ったレスリング選手……。誰もが口をそろえる。聞き慣れてしまった。
ロシアの侵攻で家を壊され、愛する家族、友人が命を落とし、自分も死と隣り合わせの日々。そんな「日常」を聞き慣れてしまうことが異常なのであって、「聞き飽きて、うんざり」となっては、ロシアのプーチン大統領がほくそ笑む。
テニスの全豪オープン取材でも、ウクライナ選手の訴えは記事に書き続けた。
ロシア選手の本音にも迫りたかった。目をつけたのが、250人収容のメイン記者会見場と違い、注目度がそれほどでもない選手が呼ばれる、20人で満杯の「インタビュールーム3」だ。そこでの取材の成果を6回の連載でデジタル版に配信しているので、以下のリンクから読んでいただけたらうれしい。
- インタビュールーム3 全豪テニスが映した戦争
取り上げた一人、ロシア出身の26歳、ダリア・カサトキナは、昨年のこの大会で、反戦を訴えた。
「ウクライナには多くの友人…