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再生可能エネルギー発電所の建設現場で働く作業員ら=2024年4月4日、インド西部カウダ近郊、伊藤弘毅撮影
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 地平線へと延びる幹線道路。道の両脇にはひび割れた地面と低木が広がり、人の姿はない。午前9時前の少しひんやりした空気を引き裂くように、インド版デコトラが猛烈な速度で路肩にとめた我々の車を置き去りにしていく。

 既に数十分。私は後部座席で、助手席から差し出されたスマートフォンを受け取った。「もう一度、必要な情報を入力してください」。スマホの持ち主で、インド西部グジャラート州の州政府系電力公社職員、ヴィレンドラさんが言う。取材現場に入るための事前登録だ。もう何度目だろう。20項目ほどの情報を打ち込み、スマホを返す。「……ああ、やっぱりダメだ」。彼が漏らすと、車内に気だるい空気が広がった。

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 インドで何かをやろうとするとき、事前の想定通りに物事が進むことは、あまりない。むしろ、予期せぬ事態の連続だ。日々の暮らしや取材はこの通り。おそらく同じようなことが、ビジネスの現場でも起きているのだろう。

 この日私たちは、グジャラートの砂漠に広がる再生可能エネルギー発電所の建設用地に向かっていた。早朝から現場入りする予定が、思わぬ足止めを食らった。建設用地は領土問題を抱える隣国パキスタンにほど近く、入域の可否は慎重な審査の末に判断される。我々はその登録の過程で、国境警備、国防、警察の各当局の「すき間」に落ち込んでしまったようだった。

 ヴィレンドラさんは方々に電話をかけ、「仕事しろ!」と叫ぶ。だが、手続きが進まない原因は不明のまま時間だけが過ぎていく。

 待ち続けて約3時間。空回り…

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