今年5月、日本のあちこちの空にオーロラが現れた。国立極地研究所(極地研)などの研究チームは、日本各地から市民が撮って送った写真を手がかりにこのオーロラの特異さに迫った。
極地研の片岡龍峰准教授は5月、X(旧ツイッター)で「ご自宅の近くから念のため、北の空にオーロラが出ていないか確認していただき、撮影できた・見られた場合には教えていただけないでしょうか」などと呼びかけた。
オーロラが見られる数日前、太陽表面で大規模な爆発現象「太陽フレア」が起きていた。地球の磁気が乱れる「磁気嵐」により、普段は見られないような低緯度の地域を含む世界各地でオーロラが発生していた。日本の近くでも、オーロラがどこまで広がるのか調べられるかもしれないという期待があった。
- 太陽フレアが起きるとどうなるの? オーロラとの関係は
すると、呼びかけを見た市民から、オーロラを捉えた写真が次々に寄せられた。最終的に、「見られなかった」という報告も含め775件の投稿が届いた。観察できた場所のうち最も南だったのは兵庫県だった。
チームは投稿者から寄せられた情報や、写真に映り込んだ星座から、それぞれの地点でオーロラを見上げた際の角度を計算。オーロラの高さが上空1千キロほどに達していたことを明らかにした。通常のオーロラは高くても600キロほどで、「まさか、オーロラが1千キロを超えるわけがないと、計算結果を何度も疑ってしまった」(片岡さん)という。桁違いの高さによって、緯度の低い地域からも見ることができたようだった。
研究チームをもう一つ戸惑わせたのは、オーロラの色だった。通常、日本のような中緯度域で見られるオーロラは赤色が多いが、送られてくる写真はみな、赤みがかった紫のマゼンタ色だった。
マゼンタ色のカギを握る「窒素分子イオン」
チームは、季節柄、夜でも上…