Smiley face
写真・図版
試合前の整列に向かう田柄の選手たち=2025年7月10日午前11時59分、府中市民、岡田昇撮影

(10日、第107回全国高校野球選手権西東京大会2回戦、多摩大聖ケ丘20―1田柄=五回コールド)

 大きく点差をつけられた四回裏、田柄の鬼塚ノエル(3年)はマウンドに集まった内野陣に大久保壮挙監督の指示を伝えた。「みんなで集中して乗り越えよう」

 親が外国籍など海外とつながりがある生徒が多い同校。野球部にもフィリピン、パキスタン、中国、ネパールと関わりがある部員がいる。そんな部のモットーは「5カ国ルーツの選手がつくるグローバル・ベースボール」だ。

 捕手の鬼塚は母親がフィリピン出身。日本生まれだがフィリピンで育ち、4歳で再び日本に。体重100キロ超の恵まれた体格を生かした長打力が武器だ。

 右翼を守ったサルワルアハマド(2年)はパキスタン生まれ。9年前、日本で飲食業をしていた父のもとへ来た。クリケットの経験があり、中学2年で野球を始めたが、勝手が違う。「難しくてやめようと思ったけど、ユーチューブでイチローの動画を見て、再び興味がわいた」

 背景にある文化が違えば、野球に対する考えも違う。主将の青木琉人(3年)は「みんな自由奔放に動き回るから、まとめるのが大変」。それでも、「人数は少ないけど、今年のチームは元気がいい」。日本語がまだ分かりづらい部員もいるため、指示は分かりやすく、簡潔に伝えるよう心掛けているという。

 体調不良の部員がいたため、9人ぎりぎりで臨んだこの日の試合。ベンチからは中国語の声援も飛ぶなど、最後まで声が途切れることはなかった。大久保監督は「みんなで助けあい、ひとつの輪になる田柄の野球ができたと思う」。=府中市民

共有