介護保険は利用者増と支え手の減少にともない、サービスや保険料のあり方も問われるなど、転機を迎えています。ヤングケアラーなどの支援を調査研究する、みずほリサーチ&テクノロジーズのコンサルタント・小佐野有紀さんは、介護保険や年金などの社会保障制度が「高齢者優遇」とみられることを危惧しています。学生時代に祖父母を介護するケアラーだった小佐野さんが考える、社会でケアを担う意味とは。
ケアラー経験のコンサル・小佐野有紀さんインタビュー
――ヤングケアラー、ビジネスケアラーなどケアラー支援を自治体などと協力して調査研究されています。介護する人にとっての介護保険の役割をどうみますか。
ケアされる人、ケアする人が望むように生きる権利を尊重し、ケアを家族で抱え込まないという社会的な理想を具現化する、強力な手段だと思います。ケアラー支援の本質は、その人自身の人生を応援していくことですが、介護保険制度はその土台にあたるものです。家族などのケアから離れる選択を保障するという意味も含めて重要であり、後退させてはいけないと思います。
――ケアについて研究することになったきっかけは。
大学生の時に祖父と祖母の介護にかかわりました。最初は大学1年の頃に母方の祖父の病気が進行し、終末期の生活を家族で支えて、私は話し相手や、見守りなどをしていました。
祖父をみとった数年後、今度は父方の祖母に介護が必要になり、見守りのため、一時期、2人暮らしをしていました。祖母はデイサービスを利用していましたが、デイに行かない時間帯は、家で私と過ごしていました。ちょうどコロナ禍でオンライン授業が中心になり、私自身、家にいる時間が多かったこともあります。
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「ケアは家族が」絶対ではない
私自身が何かを犠牲にしたと…