相手を刺すと脅しただろう――。身に覚えのない脅迫の容疑で逮捕され、身体拘束は16日間に及んだ。きっかけは、電話でのやりとりから生じた「誤解」だった。
昨秋、平日の朝。九州地方に住む会社員の50代男性は、長男を小学校に送るため自宅を出たところで、待っていた警察官と目が合い、こう言われた。
「分かってるやろ」
かけられた手錠、覚えのない容疑
思い当たるふしは何もなかった。長男を一人で登校させ、警察官と家に戻ると、「逮捕状」と書かれた紙を示された。
「あなたから脅迫を受けたとして、あなたの義理の兄が被害届を出し、裁判所が逮捕を許可した」。警察官の説明はそれだけだった。
義兄とは数日前、お金の貸し借りをめぐる口論からもみ合いになり警察沙汰になった。しかし、交番で聴取された後、「今後は直接接触しないように」と注意され収まったはずだった。
「警察は、家族間の口論で逮捕までするのだろうか。それとも、自分がほかに何かをしたのか」。いくら考えてもわからなかった。
人生で初めて手錠をかけられ、パトカーに乗り警察署に向かったが、「ちゃんと話せば分かってもらえるだろう」と思っていた。
取調室で告げられた容疑は
逮捕容疑とされた「脅迫」の内容がわかったのは、取調室に入った後だった。机を挟んで向かい合った刑事が、威圧的にこう言った。
「(義兄を)『刺しに行く』と言ったんじゃないのか」
疑いがかけられたのは、義兄…