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連載「記者、ハンターになる」#04

 ひとと野生動物の共生に関心を持つ記者が、ハンターの現場を知りたいと、狩猟免許を取りました。狩りに出る前には、農被害の現場に立ち会い、シカの解体も体験しました。

 猟銃を携えたハンターになる前に、シカによる深刻な農業被害の現場も知った。

 昨年11月の、とある朝。狩猟歴40年以上のハンターからシカがわなにかかったと電話があった。わなにかかった動物にとどめをさす「止めさし」をするから見ておかないかと誘われた。

 シカがかかった農園につくと、大根畑のそばにくくりわなが五つ。わなの周辺には、「おとり」のりんごが散らばっている。シカの脚がワイヤに絡めとられていた。

 ハンターによれば、4歳くらいのメスジカだという。農地を荒らしていたため、有害鳥獣駆除の目的で捕獲された。大根を食い荒らされた跡があった。

 「生涯現役」をうたう農家の男性(当時88)は「大根はまだたいしたことない。りんごがひどい。憎たらしい存在だよ」と語気を強める。

 一昨年の冬、リンゴの木は樹皮を食べられ十数本がだめになったという。果樹は樹皮を一周食べられると、もう育たない。10頭ほどが群れをなし、連日夜中にやってきたという。

 果樹の畑の側に監視小屋を造り、シカが近づくと夜な夜な花火を撃って追い払った。追っ払ったためか、それ以上に被害は拡大しなかったという。

増え続けるエゾシカ被害

 北海道庁によると、23年度のエゾシカの推定生息数は73万頭で18年度(65万頭)以降は増え続けている。

 農林業被害は51億4500万円(23年度)で、2億9800万円(22年度比)も増加した。被害額も19年度以降、右肩あがりだ。

 エゾシカとのあつれきは、農林業以外にも及ぶ。日本損害保険協会北海道支部のまとめでは、エゾシカと自動車の衝突事故による保険金支払件数と支払い保険金額が過去最大(23年度)を更新。件数は1085件で、金額は6億7620万円だった。

 私にはまだ銃の所持許可が下りていなかったので、銃を所持したばかりの40代ハンターが、初めての「止めさし」を体験することになった。

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農園では、有害鳥獣駆除で設置したわなにエゾシカがかかっていた=2024年11月20日、北海道、古畑航希撮影

 ハーフライフルを持って近づ…

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