「東海道五拾三次之内(保永堂版) 蒲原」
横大判錦絵 ジョルジュ・レスコヴィッチ氏蔵
(C)Fundacja Jerzego Leskowicza (C)Michal Grychowski(AMG)
=前期展示

 あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)で7月6日から、浮世絵師・歌川広重(1797~1858)の初期から晩年までの画業を総覧する展覧会「広重 ―摺(すり)の極(きわみ)―」が始まる。開館10周年を記念する展覧会で、風景画を中心に希少な初摺(しょずり)の作品を集めたことが特色の一つだ。浮世絵研究の第一人者で、展覧会を企画した浅野秀剛館長に、初摺と広重作品の魅力について聞いた。

フランス人コレクターのコレクションを中心に

 「初摺の絶対的な価値は、版が傷んでいないので、シャープできれいだということです」と浅野さんは話す。広重の浮世絵はそれなりの量が残されているが、初摺は数が少ないという。「最も有名な『東海道五拾三次(保永堂版)』は55枚揃(そろ)いですが、全部初摺のセットは世界にないと思います」

 今展では、国内外のコレクションから選んだ風景画や花鳥画、美人画など約330点を展示する(前後期で展示替えあり)。中心となるのが、ポーランド出身のフランス人コレクター、ジョルジュ・レスコヴィッチ氏のコレクションだ。質が高く、広重の三大揃物(そろいもの)「東海道五拾三次」「木曽海道六拾九次」「名所江戸百景」の展示(前後期で約60点)では、ほぼ初摺を並べることができたという。

代表作「蒲原」の「天一文字ぼかし」

 「東海道五拾三次」のうち、「蒲原(かんばら)」は広重の代表作の一つ。深々と雪が降る情景を描いたこの作品は、初摺(前期)と後摺(あとずり)では表現が異なるという。「初摺は、空の上が黒い『天一文字ぼかし』となっています。一方、後摺は逆に空の下の方が黒く、ぼかし上げています。昔は夜の暗さを強調した後摺の方がよく知られていましたが、今はすっきりとした初摺の評価が高まっています」

 摺の違いを見比べることもで…

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