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ピザ店で働いていた男性の足に残る傷痕=仙台市

 スマートフォンのアプリ上で短時間の仕事に応募して働く「スポットワーク」で、けがをするなどトラブルが起きています。利用者が大きく増えている新しい働き方ですが、落とし穴もあるようにみえます。(編集委員・沢路毅彦、北川慧一)

配達中に事故、杖生活に 運営会社に補償金求める40代男性

 「もう死ぬかもしれない」。転んだ直後は動けなかった。足の感覚はない。動いた右手でスマホを取り、救急車を呼んだ。

 仙台市の大手宅配ピザ店で、宅配を担当していた40代の男性がバイクの転倒事故にあったのは3月末。雨で道路はぬれていた。「スリップしたのかもしれない」という。

 右足の「開放性脱臼骨折」と診断され、2週間入院した。後遺症に悩まされ、今も杖が手放せない。

 男性は、スポットワークのアプリを使って働いていた。スマホにダウンロードしたアプリに登録すると、求人情報がアプリ上に表示される。希望に合う求人に応募し、マッチングが成立したら、当日働く場所に行く。履歴書は必要なく、事前の面接もない。働いた時間はアプリで管理され、賃金はすぐに支払われる。

 男性がスポットワークを利用しはじめたのは、昨年11月ごろ。就職氷河期世代にあたる男性は、労働者派遣で働いた経験がある。その後、知人の運送業を手伝っていたが、コロナ禍で仕事が減り、収入が減ったという。

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 そんなとき、宮城県内でもスポットワークのテレビCMやネット広告が盛んに流れるようになった。「背に腹は代えられない。賃金が即日もらえるのはありがたい。仕事も選べる」と登録した。

 男性は複数のアプリに登録し、午前中と夕方で別のアプリでマッチングした職場で働いた。

 納得できない経験も多かった…

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