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2025年6月30日、インド北部ダラムサラで自身90歳の誕生日を祝う行事に出席したダライ・ラマ14世=AP

 ダライ・ラマ14世が2日に出した声明には、どのような思いが込められているのか。早稲田大の石濱裕美子教授(東洋史・チベット史)に聞いた。

 ダライ・ラマ制の弱点は、転生者が成人するまでに権力の空白が生まれてしまうことだ。それを防ぐため、14世はチベット人の亡命社会の民主化に力を入れ、2011年には選挙で選ばれたリーダーに政治権力を譲り、ダライ・ラマ制の継続については民意に委ねるとしていた。

 チベット仏教には、人々を救う誓いを立てた菩薩は、救済を必要とする人々の求めに応じ、死期や再生の地を選ぶことができるという思想がある。チベットの人がいま、法王の生誕90年を盛大に祝うのは、ダライ・ラマ制の存続を人々が強く願っていることの表明であり、今回の声明はこれに応えたものだ。

 声明は、次代のダライ・ラマ…

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