(第77回春季関東地区高校野球大会2回戦、横浜8―1作新学院=七回コールド)
横浜の阿部葉太は、ベンチで仲間のドリンクを準備していた。1年夏からレギュラーを担い、春の選抜大会決勝で4安打3打点と大暴れした主将。大会前の試合で右ふくらはぎを痛め、先発を外れていた。
この窮地に、副主将の奥村凌大は燃えた。
「これまでは阿部が一人で輝いていた感じ。おんぶにだっこでやってきた。阿部がいない中で勝つことが、(チームで掲げる)『全員野球』につながると思った」
- サッカーから始まった公式戦無敗 横浜エースが送ったLINEの真意
全国制覇経験校の作新学院(栃木)を相手に、序盤は苦しんだ。二回に先取点を許し、打線は軟投派左腕の変化球を打ちあぐねる。三回まで安打が出なかった。
3巡目を迎えた五回、1死走者なし。途中出場の阿部駿大がセーフティーバントで出塁すると、1番打者の奥村凌が左打席へ。カウント2―1から、待っていた内角寄りの直球を捉えた。
「少し詰まった」が、打球は右翼スタンドに飛び込んだ。公式戦初のアーチとなる勝ち越し2ラン。この一打で勢いづき、この回一挙4得点。奥村凌は七回にコールド勝ちを決める適時二塁打も放ち、3安打3打点の活躍で打線を引っ張った。
チームは公式戦の連勝記録を「26」に伸ばした。
村田浩明監督は阿部葉のベンチ入りについて「外した方が良いか迷った」とし、「連勝記録と夏(の全国選手権大会)とどっちが大事かと考えたら、夏なので」。それでも「野球うんぬんだけではない」と、ベンチでの存在感の大きさを語った。
この日は阿部葉だけでなく、主力投手の奥村頼人、織田翔希を起用することなく大勝した。村田監督は夏の前哨戦となる今大会では、「成長、育成、経験の三つを大事にしていきたい」。