「日雇い労働者の街」として知られた横浜市中区の寿地区。住民の高齢化とともに一帯に立ち並ぶ簡易宿泊所(簡宿)が様変わりしつつある。バリアフリー化が進み、入居者への支援を充実させるところもある。
「いってらっしゃい」
鉄骨10階建ての簡宿「コムラード寿」のタイル張りのエントランス。車椅子や杖を使う人が出かけるたびに帳場の大平正巳さん(54)の声が響く。軽快な音楽も流れる。従来の簡宿とは趣を異にしている。
簡宿は寝泊まりのみを想定したつくりだ。多くは3畳一間でトイレや風呂は共同。ヤド(宿)には及ばないことから、逆さまに読んでドヤとも呼ばれた。
寿地区に日雇い労働者向けの簡宿が集まるようになったのは1956年ごろ。この年に横浜公共職業安定所が移転してきて、東京・山谷や大阪・西成と並んで労働者でにぎわった。
だが長引く不況の影響で労働者が減り、街の姿も変わった。横浜市によると、2013年度に65歳以上の住人の割合は全体の50%を超え、その後も高齢化が進んだ。失業や病気など様々な問題を抱える人も出てきた。
大平さんが寿地区で働き始めたのはその最中の32歳のときだ。精神科がメインの地域診療所に相談員として所属。患者が一人暮らしをする際の受け入れ先が十分に見つからない中で、目をつけたのが簡宿だった。
利用は2カ月待ちも
社会福祉士の資格を持つ大平…