「令和臨調・超党派会議」の報告会では1年間の率直な議論の成果を披露しあった=2025年5月27日午後6時、東京都港区、原真人撮影

記者コラム「多事奏論」 編集委員・原真人

 7月の参院選を前に各党が消費税の減税や廃止、現金給付といった年3兆~30兆円の追加財源が必要になるとみられる政策を掲げた。バラマキ合戦の様相もいつもの光景となったか、有権者もことさら驚かなくなったようだ。それも社会の劣化を示しているようで空恐ろしい。

 財政悪化は深刻だ。2023年の日本の政府債務対GDP比(数値が高いほど借金が多く不健全)は240%で、比較可能な172カ国・地域でダントツのビリだ。過去1世紀、主要国でこの値が200%を超えたのは第1次世界大戦後のフランス、第2次大戦期の日本と直後の英国、そして現在の日本しかない。

 過去、いずれの国でも国民の血のにじむような苦労で財政を立て直すしかなかった。今の日本にそんな危機感は乏しい。「まだ借金をしてもへっちゃら」と公言する国会議員のなんと多いことか。

 4年前、月刊誌への寄稿で日本の財政を「氷山に向かって突き進むタイタニック号」に例えたのは当時の財務次官、矢野康治氏だった。いつ財政危機が起きてもおかしくないという渾身(こんしん)の警告は安倍晋三元首相らの怒りを買い、更迭寸前になった。現役次官が「バラマキ合戦」と政治批判するとは何事か、というのだ。矢野論文は事実無根だからでなく「本当のこと」を言ったから問題になった。

 政治家はなぜ財政の危機的状況に無関心でいられるのだろうか。そんな不信を募らせていたが、最近、一筋の光明を見た気がした。東京都内で先月開かれた「令和臨調・超党派会議」の報告会での政治家たちの生き生きした表情である。

 令和臨調は経済界、労働界…

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