21日開幕の2025年秋冬コレクションのパリ・メンズファッションウィーク公式スケジュール。太字は公式ランウェーで、通常の書体は公式プレゼンテーションで新作を発表するブランドだ=PFWの公式HPより

 日本国内では「パリ・コレ」の呼称で浸透している、モードを発表する最高峰の催し「パリ・ファッションウィーク(PFW)」に参加した、とのうたい文句でSNSやタクシー広告で宣伝するブランドが近年、目立つようになった。しかし、実際のPFWには参加していないのに参加したように見せかける「パリ・コレ詐欺」のようなケースもあり、PFW自体のイメージを低下させかねない要因にもなっている状況だ。

 「いよいよ世界最高舞台、パリ・コレに」。ユーチューブに公開された動画で、滋賀県に本拠を構えるテーラーの代表は、こう誇らしげに語った。昨年9月25日に「パリ・コレに初参加した」といい、動画には和柄の派手なスーツを着た男性モデルたちがランウェーを歩いたり、代表らと記念撮影したりする様子も収められている。

 しかし、9月25日のPFW公式スケジュール表にはザ・ロウやドリス・ヴァン・ノッテンといったブランドのショーは記載されているが、このテーラーの名は無い。しかも、PFWはレディースとメンズの各プレタポルテ(高級既製服)とオートクチュール(高級注文服)の三つのカテゴリーでそれぞれ年に2回ずつ開催されているが、このテーラーがショーを開催したとされる日はメンズではなく、レディースのショーが開催される時期だった。

 テーラーの代表者を取材すると、「僕は海外のエージェントから依頼されて出ているだけで詳しいことは分からない」と話した。「エージェント」の連絡先を教えてほしいと伝えて了承されたが、その後連絡はなかった。

 また、ある美容機器メーカーは昨年11月から、主に東京23区内を走るタクシーの車内に流れる動画広告で「パリコレに採用されました」と宣伝している。ホームページ(HP)によると、日本の男性デザイナーが手がけるブランドが同9月にパリで開いたショーで同社の機器が採用されたとしたうえ、「機能性の高さからパリファッションウィーク(通称:パリコレ)での採用に至りました」という。この男性デザイナーのブランドもPFW公式スケジュールには、どこにも記載がなかった。

 朝日新聞は、PFWとブロードキャスティングパートナーとして契約を結んでいる。これらのブランドについて主催者に問い合わせたところ「彼らとPFWは何の関係もなく、パートナーでもない。ショーに際して『パリ・ファッションウィーク(PFW)』の名称は使えないはずだ」との回答があった。さらに調べると、テーラーが参加した催しは若手を支援する目的で世界各地でショーを開いている団体によるものだった。美容機器メーカーの機器が「採用」されたという男性デザイナーのブランドも、他の都市で開催された同じ枠組みの催しに参加していた。いずれにしても、トップブランドが集うPFWとは程遠いものだ。

主催者は「全く無関係」とキッパリ…なぜなのか

 この美容機器メーカーでCM…

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