世界保健機関(WHO)は16日、新たな感染症の世界的流行(パンデミック)に備える「パンデミック条約」の策定をめぐる交渉で加盟国が合意に達したと発表した。コロナ禍の教訓を踏まえ、先進国から途上国へ医薬品の技術移転を促すことなどが盛りこまれた。5月のWHOの年次総会で採択される見通し。
発表によると、合意された条文案では「パンデミックの予防、備え、対応の国際的な協力を強化する」とした。新型コロナウイルスでワクチンの不足や供給の偏りが起き、途上国で接種が遅れた反省から、医薬品の現地生産を促すなどして途上国を支援する内容を盛り込んだ。世界規模のサプライチェーン(供給網)や物流ネットワークの確立も明記した。
条文案をめぐっては、医薬品などの技術流出を防ぎたい先進国と途上国の対立が長引き、交渉は3年を超えた。昨年の総会で採択予定だったが、交渉を1年延長していた。
WHOのテドロス事務局長は「世界を安全にするための世代を超える合意が実現しただけでなく、多国間主義が健在であることが示された」と合意を歓迎した。
一方、トランプ米大統領は1月の就任直後にWHOからの脱退を表明。今回の交渉にも米国代表は参加していない。世界的な製薬会社を抱える米国を欠く条約の実効性は不透明だ。